2006年07月 | マスコミ紹介記事

企業家には、会社と社会の発展を同時に追及してほしい

2006年07月26日

柔道の普及で日本理解を目指す

- 山下さんはこの4月、柔道を世界に普及するため、NPO法人柔道教育ソリダリティーを設立されました。そのきっかけをお聞かせください。

2004年4月、モスクワで行われた「日露賢人会議」の席で、経団連の奥田碩会長にお目にかかりました。奥田さんは一橋大学時代柔道部で活躍され、私の活動にも関心を持っていてくださったのです。その後対談集「武士道とともに生きる」も出版することができ、おつきあいが深まったのですが、奥田さんは「山下さんは柔道普及のためにいい活動をしているけれど、資金集めなどにも自ら率先して収り組んでいて忙しすぎる。それなら小さくても何か組織をつくって、広く浅くお金を集め、山下さんは本来の活動に力を入れてはどうですか? 何かあれば協力しますよ」とおっしゃってくださいました。そこでNPO法人を設正しようという気持ちになったのです。
それまで私は国際柔道連盟の教育コーチング担当理事として世界を回ってきました。柔道をしている人は、世界中どこでも日本の文化に興味を持っています。例えばロシアのプーチン大統領は柔道の有段者で愛好家として知られていますが、「柔道はただのスポーツではない、哲学である。それは政治家としての活動にも生きている」とおっしゃいます。柔道では最初に戦う相手に礼をし、「ハジメ」の声によって競技をスタートさせます。大統領はその理由を最初のうちわからなかったそうです。しかし続けていくうちに意味を理解し、日本語や日本文化にも興味がわいてきたということでした。大統領だけでなく、柔道を通じて日本に興味を持ち、柔道によって生き方を学んでいる方はたくさんいらっしゃいます。

ところが、世界の国々を歩いていますと、柔道と関係ない人は日本のことをあまりにも知りません。長い歴史、豊かな自然、その中に神々が宿るという考え方、相手を敬う心。それらを日本は誇るべきですが、関心を持ってもらえないのではしかたないですね。また、柔道をやりたくても貧しくて柔道着を買えないという国もたくさんあります。指導者がいない、畳もない。
そういうところで柔道をやっている人たちは、相手をやっつけるためだけの戦いだと誤解してしまうのです。私は世界に柔道の心を伝えたい、そう思って、これまでは国際交流基金、外務省、JICA、企業などの支援を得て活動を続けてきました。これまでに国内で集めたリサイクル柔道着を3万5000着贈ったのもそのひとつです。年間50名の指導者を海外に派遣しました。こういう活動をNPOで引き継いでいくつもりです。

- 息の長い活動を続けなければ、本当の日本理解にはつながりませんね。諸外国からの依頼も多いのではありませんか?

例えばイラクからは戦争で国土が荒廃したため、日本に柔道振興を支援してほしいという依頼がきました。その声にこたえて様々な支援を行い、福岡で開かれた国際中学生柔道大会にも選手を招聘しました。また、ロシアの北オセチア共和国で起きた学校へのテロで生き残った子供たちも呼びました。大けがをしたという子供たちが本当に喜んでくれ、プーチン大統領にも感謝されました。北京オリンピックを控えた中国の男子チームの指導にも取り組んでいます。12月には柔道の女性指導者の地位向上を目指して福岡でセミナーを開きます。

「自他共栄」の心を持とう

- 大学での指導や国際柔道連盟の活動など、非常にお忙しいはずの山下さんがなぜまたNPO活動を、という声もあるのではないでしょうか。

柔道の創始者嘉納治五郎には「自他共栄」とう言葉があります。私自身の夢はロサンゼルスオリンピックの金メダルで現実のものになりました。その4年前のモスクワオリンピックは日本がボイコットしたため、私は参加できませんでした。当時の各階級の代表選手は、私以外誰もロサンゼルス大会に出場できなかった。それだけ日本の選手層は厚かった。私はたまたま若かったから何とかなったんですよ(笑)。
たしかに私も努力しました。命を削るような稽古をしたものです。だけどそれだけじゃない。
他の人の支えが大きかったと思います。それを社会に返すのは当然のことです。NPO活動するのも恩返しの一環です。

- 山下さんの考え方は、起業家や、これから起業しようとする人にも学んでほしいと思います。成功したから自分だけがぜいたくをするというのでは、寂しい気がします。

本当ですね。私は起業して成功するのは本当にすばらしいことだと思います。私が色紙に書く言葉はいつも「挑戦」です。起業家はまさに挑戦する人たちですよね。だけど、その人の成功は自分だけでできたものではない。そう思って過信やおごりになります。
そもそも何のために会社を起こすのでしょうか?お金が欲しい、それも悪いことではないでしょう。その思いが実現したら満足に浸るのではなく、社会に還元してほしいと思うのです。

よく「ギブアンドテイク」といいますね。私はまずギブがあると思っています。自分が何かほかの人にできるのは幸せなことですよ。それはいつか予想もしない形で返ってくるものです。

もっとも私だって20代の時からこんなふうに考えていたわけではありません。けれど、自分だけではどうしようもない現実にぶつかる時がありますね。私にとって、モスクワオリンピックがそれでした。その後骨折もあり、苦しい時期が続きました。でもそういう時、不思議な天の声が聞こえたんです。「おまえは今までよく頑張ってきた。でも世の中は思うようにいくものではない。今は体を休めて柔道について考えてみる時期だ」と。その時期があったから、次のオリンピックで金メダルを獲得できたのだと思います。

今は世界的に勝ち組、負け組みがはっきりしてきましたよね。そういう時代こそ、日本が大事にしてきた利他の精神や、弱者に対する惻隠の情(思いやりの心)が大きな意味を持ってくるはずです。また、「儲けたら社会貢献します」というだけではダメだと思うんです。企業の理念の中に、最初から社会貢献の心が入っていることが重要です。会社の発展と社会の発展を同時に追及していくのは大変なことだし、勇気や決断が求められます。でも、それにあえて挑戦する人が増えてほしいですね。自分が豊かになるだけでなく、世の中をよくしていこうという心を少しでも持つ。それが千人分、一万人分集まったらとても大きな力になるのではないでしょうか?長い意味で人生を成功させられる人は、必ずそういう思いを持っていると思います。

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私は柔道を通じて日本の深い心を伝えたい。
正しく学べば、必ず日本文化に興味を持ち、日本を理解してくれるはずだから。
この4月にNPO法人を設立したのは、私を支えてくれた人たちと柔道への恩返しのため。

 

 

誰もが会社を設立する時から、社会への貢献を理念として取り入れてみてはどうか。
すべての起業家がそうなれば、社会はきっと変わる。

雇われないで 生きていく

2006年07月26日

柔道は礼に始まり、礼に終わる。
ただ戦いに勝つだけでなく、
戦う相手に礼を尽くすのだ。
柔道の心は私を人間として育ててくれた。

だが、世界中には柔道をやりたくても
貧しくて柔道着が買えず、畳もなく、
指導者にも恵まれない人々がいる。
彼らの多くは柔道をただ勝つだけのものと思っている。

柔道を通して日本の心を世界へ

2006年07月25日

World Wide Tokai 柔道【学園校友会誌「TOKAI」143号】

日本の国技「柔道」。本学園は、創立者である松前重義博士の時代から、柔道の第一線に関わってきた長い歴史を有しています。

 

 

写真:柔道の普及活動のため、ロシアを試問した山下泰裕教授と井上康生選手(東海大学卒業生)

現在も「柔道」そして、「日本の心」を世界へ広めるため、本学園は東海大学体育学部・山下泰裕教授を中心に、積極的にその活動に取り組んでいます。

柔道の普及活動を通じ各国と文化交流を行う

競技としてだけなく、武道という文化としても世界の人々に親しまれている柔道。しかし、練習環境が整っていない国々が多く、様々な支援を必要としている実情があります。そこで、国際柔道連盟理事でもある、東海大学体育学部・山下泰裕教授は、年間約三分の一の期間、世界各国へ赴き、柔道の普及活動とそれによる国際交流を進めてきました。柔道の有段者であるロシア・プーチン大統領とは、そうした活動を通じ、親交を深めています。

 「様々な支援活動を通して、異文化理解が深まり、友情が培われると良いと思います。また、柔道教育が世界に広まり、日本文化の本質が伝わっていくことを期待しています」と語る山下先生。

その山下先生が掲げている「柔道・友情・平和」のモットーは、本学園創立者で、国際柔道連盟会長でもあった松前重義博士の精神を受け継いだもの。「松前柔道」が山下先生を通じて、今もなお、世界に普及し続けているのです。

さらに、リサイクル柔道着の無料配布や、外国人柔道研究生の受け入れと、これに伴う大学院での受け入れプログラムなどを実施。本学園は今後もスポーツ活動による国際交流にカを入れていきます。

かつての日本の「和」の心を世界へ。

2006年07月04日

国際開発ジャーナル
(株)島津インターナショナル
7月号2006 No.596

日本では考えられないけど、世界には1着の柔道着をみんなで回し着したり、畳がないから砂場で柔道しているような国がかなりあるんですよね。そういう貧しい国々での柔道普及を支援していくために「柔道教育ソリダリティー」を設立しました。リサイクル柔道着の寄贈、指導者の派遣、外国人選手や指導者の受け入れなどをしています。

世界の柔道普及と同時に、柔道を通して日本の心を伝えたいという思いがあります。柔道で使われる言葉は、「礼」、「始め」、「一本」などすへて日本語。外国人は、初めは分からないけど、やっているうちに「どういう意味があるんだろうか」、「なぜ試合前に頭を下げるのだろうか」と疑問をもってきます。そうすると、柔道は激しい競技だけど、「一番大事なのは相手に敬意を払うこと。それが日本式の礼である」、「戦う相手は敵ではない。相手がいて、自分を麿き高めることができる」とだんだん柔道の思想や哲学にも当然触れてくるわけなんですね。だから、世界の柔道家たちは、日本文化への関心が高いのです。

反面、世界をまわってみると、まだまだ日本という国が理解されていないと感じます。ですから、柔道を通じて日本への興味を示して欲しいのです。たとえば今、北京五を控えた中国男子柔道の強化を支援しています。悪化している日中関係ですが、柔道で少しでも相互理解の手助けができればと思っています。

今、アメリカ的な価値観がクローバルスタンダードみたいになっているけど、世界には多種多様な文化があって、そこを一つの価値観で決めていくのは無理があるような気がします。逆に自分と違うものを認め、共通点を大事にしてお互いを尊重しながら共に頑張っていくことが必要なんじやないかな。市場経済の下に、貧富の差が広がっている。自己主張もいいけど、かつての日本的な相手の立場を尊重する「和」の心が世界に広がっていくことが、多くの人たちの幸せや平和につながっていくのではないかな。僕は、われわれさえも見失っている日本人の心を柔道からよみがえらせたい。