第3回中国便りが届きました

2008年01月10日 (木曜日)

img_entry_080109_8.JPG 現在、中国昆明にて中国男子柔道ナショナルチームの強化にあたっている東海大学体育学部光本健次教授より報告が入りました。

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                                 2008年1月元旦
                            東海大学体育学部教授 
                                    光本 健次

 明けまして、おめでとうございます。
 中国男子柔道の冬季合宿が行われております昆明市より、NPO法人柔道教育ソリダリティー会員の皆様に新年のご挨拶を申し上げます。
 昆明は雲貴高原の中部にある、三方を山に囲まれた風光明媚な雲南省の文化・行政の中心地に位置しています。標高1891mにある昆明は1年を通して気候が穏やかで、緑の絶えることのないこの町は春城と呼ばれています。
 中国の民族構成は、全人口の92%を占める漢族と残りの8%を占める55の少数民族からなり、雲南省全体でも25の少数民族が住んでおり、昆明にもイ族、ペー族、ナシ族、ハニ族など12の民族が住んでいます。練習の合間(休日)を利用して、少数民族を紹介する雲南民族博物館を見学してきました。毎日が変化のない練習漬けですから、中国少数民族の社会形態、民族工芸・美術、民族の慣習など、学術的分野に触れ、ちょっとばかし新鮮な気分でした。

 【雲南民族博物館の前で】

昨年11月、2008年北京オリンピック柔道競技会場のテストイベントが市内で開催されました。日本選手団より「畳がすべる?」などのクレームがあったようですが、とりあえず問題にならず無事終了しました。
 そういえば寒くなってきた道場で、中国コーチは当たり前のように靴下を履いて練習を見守っています。コーチの靴下はまだ許せますが、驚くのは選手も靴下を履いたまま乱取り(練習)していることにビックリしました。

 【柔道場の概観(北京)】

 【柔道場】

 【フィットネスセンター】

 普段の乱取りでも靴下を履いているくらいですから、オリンピック会場の「畳がすべる?」ことなど、この国の人間の感覚から言ったらたいした問題ではないようです。繊細な日本人には、ちょっと理解しがたいことでありますが。コーチは依然靴下を脱ぎませんが、選手は改善させ練習しています。
 また明日の練習は9:00からと言ったら、9:00から練習が始まるのではなく、9:00頃にノソノソと集まって来ます。時間を厳守する日本流で考えれば頭にきて血圧も上昇しそうですが、日本の約26倍の国土を保有し、わが国の人口の約12倍、単純計算でも世界の人口の5人に1人が中国人というわけですから、少々のことでは自分たちを変えようとはしないようです。
 メンツが何よりも大切な人種とされ、他人から「スケールが大きくて太っ腹な人」と思われることが重要と考える傾向が強く、細かな時間や予定などイチイチ気にしていません。「時間をもう少し守らせなさい」とコーチに注意しても、ただ苦笑いが返ってくるだけで、注意した私が小さな人間の様で少々寂しい気がしていることが不思議です。日本での練習経験はコーチも選手も豊富な者が多いはずなのですが、どうも祖国に戻るとチャイニーズ流が健在になってしまうようです。

 【北京ワールドカップに出場したメンバーと】

 会場が変わって北京ワールドカップ団体戦が翌日開催され、優勝が日本、2位ブラジル、3位中国・韓国の結果でした。中国はオーストラリア連合に圧勝しましたが、ブラジルに敗れ、敗者復活でフランスに勝利し、何とか地元で入賞することができ肩の荷が下りました。欲を言えば決勝で日本と対戦したかったのですが、ブラジル旋風に歯が立たず惨敗でした。リオの世界選手権以来、ブラジル恐るべし、勢いがありますね。

 【北京オリンピックの会場になる北京科技大学の体育館】

 【団体戦は3位と健闘しました】

 【団体戦の選手達】

 11月下旬には青島国際、12月上旬に韓国(済州島)国際などに、中国の若い有望選手を起用し力を試させました。各階級の選手層が厚いわけではないので、若手選手は経験不足でなかなか勝てません。韓国国際より日本での嘉納杯に臨み、初日に行われた-60Kg級で(Liu Renwang)第3位と検討してくれました。Liu Renwang選手は優勝を飾った平岡選手に優勢負けで敗れましたが、内容は接戦で検討したと感じています。

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 さて、北京五輪が開催される2008年の幕が開きました。国家の威信を懸けて臨む中国は、TV・新聞などから五輪へ向けた選手強化の総仕上げに入っています。中国の選手育成方法は、地方の優秀な素材を中央(北京)に吸い上げ、「口区(こうく)→市→省→国」の順で選手をふるいに掛け、鍛え上げていく体制です。選ばれた選手は、実績に見合った給料が各省から支給されます。現在、約60名の選手が練習に励み、その内の40名が国家選手です。またコーチは9名いますが、日本で言うナショナルコーチは全体を総括しているヘッドコーチの石 明(Shi Ming)氏だけです。他のコーチは各省から選手を引率し、そのままコーチ(指導者)として参加しています。中国男子柔道の強化体制で難しいのは、自分(省)の管理している選手は指導しますが、他の省からの選手は一切指導しません。
 中国入りした当初、選手の1人が練習に参加していなかったので、コーチを呼び「どうしたのか? 部屋に行って確認するように?」命じましたが、自分の選手ではないので指導できないという返事でした。当初はこの指導体制が良くわからず、慣れるまで大変苦労しました。私のここでの指導は東海大学の特別研究休暇を活用した半年間、それもオリンピックでの悲願の男子メダル獲得という大きな目標に向かっての強化です。限られた期間の中で、できるだけ最短で強化できる方法を模索し実践してきました。柔道の練習以外、仕事を持っていない彼らには時間が豊富にあります。この豊富な時間を利用してオリンピックまで鍛え上げようと1日8時間ぐらいの練習をしたこともありました。

中国コーチを就任して3ヶ月、選手はこの短期間で十分結果を出してくれたと思っています。

・07年(リオ)世界選手権、各階級全員1回戦突破。+100Kg級第5位。
・07年(イギリス)ブリティッシュオープン+100Kg級第3位、-100Kg級第5位、-90Kg級第5位。
・東アジア選手権 団体3位。-60Kg級優勝及びその他全階級で入賞。
・北京ワールドカップ団体3位。
・嘉納杯-60Kg級第3位。
・中国オリンピック選考会(日本で練習した選手が各階級で優勝しました)

 年間穏やかな気候の昆明の冬季合宿は、6:30に起床しランニングから始まります。この時間ではまだ夜が明けませんが、北京の空とは違い夜空に星がいっぱい光っています。
 昨年まで私が中心に実施してきました強化体制から、今年度は中国コーチを前面に押し出して指導させています。私はコーチをバックアップしながら全力で応援して行こうと考えています。コーチも各階級で責任を持たせ、厳しく強化に当たらせています。中国で正月を迎え、私の指導も残り少なくなってきました。私の帰国後も、この強化が継続できるようなシステムを残していければと思っています。

 【練習以外でも中国コーチと交流を深める光本教授】

 【雲南省昆明の町並み】

 このキャンプ地には、日本からマラソンの高橋尚子選手(Qちゃん)も北京を目指して練習しています。暗い朝トレの最中に「おはようございます、日本から柔道の指導者が来られていることを聞きました」と、声をかけてくれた日本人がいました。この方は韓国企業の三星電子株式会社陸上部コーチ 村尾慎悦(Murao Shinetsu)さんで韓国選手を率いて北京を目指しています。いろいろな方が北京オリンピックを目指していることを強く感じています。
 日の丸の柔道着を脱ぎ捨て、「俺は今日から中国人になる」って言った日を思い出します。昆明の町で買い物していると、老夫婦が側に来て私に道を尋ねてきました。もうすっかり私も中国人になっているようです。
皆様にとって今年が良い年でありますように中国(昆明)からお祈り申し上げます。

コメント

光本健次様

大変意義深く責任在るお仕事で良いですね、ご苦労様です、一生懸命鍛え上げて世界中の選手だけでなく日本にも勝てるよう育てて挙げて下さい、光本先生だけでなく東海大学の指導者としての度量の大きさを見せて上げて下さい。
中国柔道の歴史に素晴しい足跡が遺せます様に・・・頑張って下さい。
小泉広治